2004.12

北海道 阿寒湖

「あかん湖鶴雅別荘 鄙の座」

Task

総合プランニング/コンセプトワーク/ロゴデザイン/内装・意匠設計/サインデザイン

レストラン器デザイン/室内着・制服デザイン/販売ツールデザイン/家具・備品コーディネート

阿寒の郷土力

「鄙の座」は、北海道阿寒湖にあります。鶴雅グループの最初の仕事となりました。そして「郷土力」という言葉を作ったのもこの館からでした。かつてから、日本の少数民族であるアイヌ人たちが住む土地であること、また生態系の宝庫である釧路湿原があることから、とても関心のある土地でした。初めて阿寒湖に訪れた時は、厳寒の季節であたりは雪に覆われていました。「何と強い力と神秘に満ちた土地だろう」と感じたことを覚えています。

阿寒町は、アイヌ民族の住むアイヌコタンと、内地から来た日本人が暮らす地域が共存しています。

アイヌ民族が、脈々と語り継いできた原始の森が育む神、カムイへの尊敬、かつて本州からやってきた日本人が遠く海の向こうに置いてきたふるさとへの郷愁。二つの民族のこころの故郷を融合させる宿として故郷を意味する「鄙」と囲炉裏を囲むような「座」から「鄙の座」とし、素朴な数奇屋造りとアイヌのチセ(家)のイメージを融合させて行くことにしました。

原生林に囲まれたアイヌ文化が残る風土を根底にしたここにしかない「郷土力」を発信する初めての館となりました。

アイヌ文化には神に祈るカムイノミという儀式があります。カムイを天界に返す儀式です。アイヌが意味する神とは、クマやフクロウなどの動植物や、人の手の及ばないもの風や雷などの自然現象なども含む万物を示します。熊送りの儀式「イヨマンテ」などもカムイノミの一種です。肉と毛皮を土産に持って人間界へ来てくれたクマであるカムイに感謝し、神の国へ送り帰す儀式なのです。

彫刻とアイヌ文様の鍛鉄のフレームがある玄関。アイヌ文様は、草の棘や獣の目をイメージさせます。アイヌ文様を袖口や襟、背中につけるのは、邪悪なものを封じるためだそうです。この玄関にもアイヌの教えを盛り込みました。

土壁で仕上げた土間ギャラリーには、羽を広げて館を見守るコタンコロカムイ(村の守り神であるシマフクロウのこと)の木彫を配しました。

玄関から目の前に阿寒湖を眺めるラウンジへ。巨木から作られたバーカウンターにアイヌ文様の象嵌をしました。

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